AIに関する技術は以前から人々の関心を集めていましたが、2000年代にディープラーニングが注目され、人工知能のブームが起こりました。さらに2022年にはChatGPTが登場し、生成AIの進化によって働き方や生活スタイルなどが大きく変わろうとしています。世の中を大きく変える技術のため、多くの企業が生成AIを活用してビジネスを加速させようとしていますが、「思ったように成果が出ない」「どのように生成AIを活用すればいいのか分からない」という企業も少なくないようです。そこで今回は、ビジネスでAI時代に出遅れないためのAI設計の考え方と注意点、マインドセットについて解説します。目次AI活用の第一歩:生成AIの仕組みと成功のカギ「生成AI」とは、大量のデータから学習したパターンをもとに、新しいコンテンツを生成するAIを指します。従来のAIは、学習したデータを元に判定や予測を行っていましたが、生成AIはキャッチコピーなどのクリエイティブな文章や、入力したテキストに応じたイラストや画像を生成することも可能になりました。ビジネスで生成AIを活かすには、まず学習させるデータの精度が高いことが重要です。どんなに大量のデータを学習させたとしても、ノイズが多いデータでは、生成されたデータの精度が低くビジネスに活かすことができません。そればかりか、間違った情報(ハルシネーション)を生成してビジネスにリスクを与える可能性も考えられます。そのため、どのようなデータセットを用いるかが、生成AI活用の成否を左右する重要なポイントとなります。また、AIの処理方法も重要です。ChatGPTは「プロンプト」と呼ばれる指示や質問に応じてデータを生成しますが、目的によってAIの処理方法が異なるため、自社にマッチした方法を選択しましょう。AIに学ばせるべき「3種のデータセット」ビジネスでAIを活用する場合、どのようなデータをAIに学習させるかが重要です。AIに学習させるための、3種のデータセットを解説します●1.誰もが利用できるオープンなデータセット1つ目は、誰でもアクセスができる「オープンデータセット」です。社外のオープンなデータを活用する方法で、政府が公開するしている公共データや、研究機関が提供しているデータなどが該当します。オープンなデータは自由に使えるため、マーケット分析や業界調査などに活用しやすいのが特徴です。参考:e-Govデータポータルhttps://data.e-gov.go.jp/info/ja●2.特定企業などが保有する半クローズドなデータセット2つ目は、特定のプラットフォームやコミュニティ、企業などが保有している「半クローズドなデータセット」です。例えば帝国データバンクが提供する企業データベースなどが代表的です。これらのデータは、企業が有料で提供している場合が多く、またはデータ収集の代行サービスを通じて入手することも可能です。半クローズドなデータセットなので、自社のターゲット顧客リストの作成や、精度の高いマーケティング施策に活用できる点がメリットです。●3. 社内のクローズドなデータセット3つ目は、受注実績や営業履歴などの「社内のクローズドなデータセット」です。例えば、過去の受注実績をもとに、AIが受注確度の高い顧客を抽出するといった方法も考えられるでしょう。自社独自のデータを活用することで、オープンデータよりもビジネス成果につながりやすい高精度な分析が可能になります。実際、採用業務などでもAIの導入が進んでおり、人材データの活用方法も多様化しています。詳しくは以下の記事をご覧ください:▶︎ AI活用で変化する採用担当者のキャリアパスと求められるスキルとは?AIはどう動かす?3つの方法を比較AIの動かし方には3つの種類があります。特に生成AIは質問(プロンプト)の仕方によって回答が変わるため、どのように動かすかも重要なポイントになります。●1.単発のプロンプトを処理する方法1つ目は、1回きりのプロンプトを入力して、その都度AIからの回答を得る方法です。ChatGPTのフォームをイメージするとわかりやすいでしょう。シンプルな構造であれば単発のプロンプトでも問題ありませんが、対話形式のAIで複雑な処理をさせようとすると、長文のプロンプトが必要になり、回答の精度も低くなってしまいます。最初にアウトプットのイメージを固めておくことが重要です。●2.複数のプロンプトを処理する方法2つ目は、プロンプトを複数にわけて処理する方法です。例えば、AI文字起こしツールで営業トークをテキスト化し、AI文章校正ツールで文章データを整え、生成AIで分析させるといった複数のツールやAIを連携させる活用法が考えられるでしょう。この方法では、複数のAIが情報を渡しながら1つのアウトプットを生成します。●3. AIエージェントを活用する方法3つ目は、AIエージェントを活用するという形式です。AIエージェントは「自律型AIエージェント」とも呼ばれ、生成AIとは異なります。プロンプトで動くのではなく、設定されたゴールに向かって自律型で動く形式です。例えば、「アポイントの日程予約」をゴールとして設定し、AIが取引先データを参照しながら顧客への連絡や日程調整を自動で繰り返し、アポイントが取れるまで顧客にアプローチし続けるといった活用方法が考えられるでしょう。より高度な業務自動化やプロセスの省力化を実現できる点が、AIエージェントの強みです。精度を上げるために不可欠な「データ整備」と「意味づけ」AIが正しくデータを学習するために、まずAIが正しく読めるデータを整備・構築することが重要です。特に自社データの場合は、AIで利用することを想定したデータベース設計構造になっていないケースも多く、表記揺れや入力漏れなどが発生して適切に学習が進まない可能性があります。できる限り人力で入力するのではなく、システム側で自動入力される仕組みや、行動ログや会計データと連携してデータベースに反映されるなど、自動化することが大切です。また、データを分析できる状態にするために、テキストデータではなく数値化するといったデータ設計もポイントになるでしょう。特に、従来は入力の対象ではなかった音声や動画データなどの非構造データも、AI文字起こしツールなどの登場によりデータ化できるようになっています。自社で獲得できるデータはできる限り構造化し、AIが扱いやすい形に整備しておきましょう。また、データを溜めただけではAIは判断ができないので、データに意味づけを行うことも重要です。これは機械学習の学習手法のひとつで、正解をあらかじめAIに教えておくという方法です。データに意味づけをすることで、AIは正しく判断できるようになります。将来的には、自社のデータが足りず分析できなかったとしても、例えば他社のPOSデータなどを突合させてデータを補完し、AIが分析するといった方法も可能になるでしょう。まとめ:AI活用で成果を出すために必要な視点とはAIを構築して自走できるようになれば、継続的に学習するので改善も進みます。しかし、AI活用がうまくいかない企業の中には、AIを魔法のように捉えており、「AIを使えばビジネスが大きく飛躍する」という過剰な期待をしているケースもあるようです。壮大な効果を夢見た結果、AI構築が進まないのであれば、まずはデータベースを整備して、小さなタスクをAIに任せるところからスタートしましょう。社内データが未整備の場合は、とりあえず社外の公的なデータを使って、簡単な分析やリスト化をするAIを作り、社内にAIのユースケースを蓄積することが大切です。データ整備と並行してAIの規模を次第に大きくしていけば、完成イメージを持ちながら開発を進められるでしょう。もし、「自社のリソースでAI活用を進めるのが不安」という場合は、GLナビゲーションにご相談ください。当社は10種類以上のAIを活用して業務のDX化を図り、AI利用の第一歩をサポートする体制も整っています。AIの活用だけでなく、営業や業務全体のDX推進が成功の鍵になります。以下の記事では、営業DXを進める上での具体的な方法を解説しています:▶︎ 営業DXを推進するために必要なこととは?AIを活用することで、業務が効率化され人手不足の解消にもつながります。AIにご興味をお持ちの場合は、ぜひご検討ください。