2022年に登場したChatGPTは世界に衝撃を与え、国内外で生成AIの活用がトレンドになりました。デジタル化やAIの活用が難しいとされてきたBtoBの営業領域でも、AI活用に向けた取り組みが行われる時代になっています。もちろん営業だけでなく、様々な分野でAIの活用が広がっていくでしょう。AIの技術進化は急加速しており、自ら考えて動く自律型の「AIエージェント」も登場しています。今後はAIエージェントがさらに進化し、「デジタルワーカー」と呼ばれる社員として、人と一緒に働くようになるでしょう。そこで今回は、AIが単なるツールとしてではなく、人間のパートナーとして企業で働いたら、組織や働き方、キャリアにどのような変化が訪れるのかを予測します。目次デジタルワーカーが企業や働き方にもたらす3つの変化AI社員であるデジタルワーカーが企業に働くようになったら、人間との関係性や働き方にどのような影響をもたらすのでしょうか。考えられる3つの変化をご紹介します。●デジタルワーカーは上司にも部下にもなる「AIは人間の指示で動くもの」というイメージがあるかもしれませんが、デジタルワーカーは上司にもなるし、部下にもなるでしょう。デジタルワーカーが上司になった場合は、人間の部下の行動に対して、指示や評価をします。人間は上司であるAIの指示に従って行動し、行動した結果をシステムにインプットします。データを蓄積し続けることによって、AIの上司の学習が進み、より正しい指示や評価ができるように成長するでしょう。デジタルワーカーが部下になる場合は、人間と同じ業務を行ったり、特定分野で人間の上司の指示により行動したりするデジタルワーカーが登場するでしょう。デジタルワーカーの上司になるデジタルワーカーも出てくるかもしれません。デジタルワーカーの指示で動くデジタルワーカーがいて、AIのアウトプットに対してAIが評価や判断をして、管理するデジタルワーカーが登場することも考えられます。AIは上司にもなるし、部下にもなる。そして、上司と部下の関係性は、「人間とAI」だけではなく、「AIとAI」というケースもあるかもしれません。●デジタルワーカーにも個性や多様性が生まれるAIはデータを学習することで動きますが、デジタルワーカーの役割や目的によって、参照するデータは変わります。社内に異なる参照データで動くデジタルワーカーが登場し、あるデジタルワーカーは自社に蓄積されたデータやインサイトを参照して動きますが、別のデジタルワーカーは社外のマーケットデータなどを参照して動くようになるでしょう。人間で例えると、新卒入社で働いてきた人はその企業のルールや蓄積された経験で行動しますが、中途入社した人は別の業界や企業の経験も含めて行動します。人間がこれまでの経験から価値観や個性が形成されるように、AIも異なる参照データをもとに動くために、特徴や個性が生まれることが考えられるでしょう。なお、参照データが同じでも、データの見方や読み解き方を変えれば、AIは異なる判断や指示を出すようになります。異なるデータを参照したり、判断ポイントを変えたりすることで、組織の中に多様性を作り出すことができるでしょう。●組織や職種の在り方が変わる多様な判断や指示ができるデジタルワーカーを採用できるようになると、組織や職種の在り方も変わってきます。例えば、これまで1名が担当していたポジションを2名のデジタルワーカーが担当する、1名が作っていた提案内容を2名のデジタルワーカーが連携して作るケースもあるでしょう。3名で行っていた業務を2名のデジタルワーカーが担当する、人間とデジタルワーカーが協働して行うことも考えられます。職種の定義や組織の形が変わり、部門によってはデジタルワーカーしか存在しない組織も生じるかもしれません。従来のAIの役割は、我々の仕事の一部をサポートしてくれる「人間のためのAI」という認識でしたが、今後は「人間とAIの共存、協働」に変化します。モニタリングや監視などの仕事は、人間がシフトを組みながら24時間、365日チェックしていましたが、デジタルワーカーを配置することで、人間がデジタルワーカーの動きをチェックするという仕事に変わるかもしれません。営業の仕事も、提案書やセールストークの作成はデジタルワーカーが行い、人間は顧客がどのような反応をしたか、どのような感情を抱いたという結果を正しくインプットするという働き方に変わることも考えられます。AIの進化で「営業」の仕事に起こりうる3つの変化AIが進化することで、営業の仕事も大きく変わるでしょう。変化のポイントは3つあります。1つ目は、AIが示した行動に則って人間が動くという「サジェスティングセールス」です。人間が営業方法を考え、判断するのではなく、AIが推奨した提案を人間が実行するようになるでしょう。2つ目は、全ての営業活動をデジタル化し、AIが学習し分析可能な状態にする「デジタルオンリー」です。デジタル化する営業活動には音声データも含まれますが、AIの文字起こしツールなどがあるため、作業自体もAIに任せるようになります。3つ目は、営業という職種の定義を変える「セールストランスフォーメーション」です。営業は商品やサービスを売る仕事ではなく、AIが提示した行動を実行し、顧客の反応を正しく入力する仕事に変わるでしょう。もしくはAIが営業活動をおこない、人間はその活動に対する評価をおこなうことも考えられます。人間の介在価値は、相手の反応を読み取れることです。相手の反応や思考を正しく読み取ったり、感情の機微を察したりすることは、現時点でのAIには不向きです。こうした「人間力」はAIよりも人間の方が得意としているので、人間が営業でやるべきなのは、セールスではなく顧客の反応を正しく掴み、システムにインプットすることになります。また、AIはデータがなければ何もできません。デジタルワーカーを活かすには、AIにデータを学習させて育成する組織風土が重要になります。AI時代の人間が求められる力は、「人間力」の他に、「デジタルワーカーを育成する力」も挙げられるでしょう。デジタルワーカーの育成が企業の差別化につながるため、競争環境は「より優れたデジタルワーカーを育成する」という方向に変わる可能性があります。今後はデジタルワーカーを育成できる組織が伸びるこれまで工場や建設現場などの仕事は「ブルーカラー」と呼ばれ、「3K」の印象を抱かれやすい傾向がありました。その結果、オフィスで働くホワイトカラーの職種を選択する人が増え、スペシャリストやマネジメントポジションを目指すのがキャリアアップとされてきました。しかし、専門性やデータに基づいた合理的な判断はAIの得意分野です。人手不足が深刻化する日本では、AIに置き換えが可能な一部のホワイトカラーの仕事よりも、AIでは代替できない現場の仕事が注目され、人材としての価値が高まるかもしれません。AIの登場によって、仕事の価値観や経験・スキルへの評価も大きく変わっていくでしょう。アメリカの半導体メーカーであるNVIDIAのCEOは、「AIが仕事を奪うのではなく、AIを活用する人が人の仕事を奪う」という言葉を残しています。「AIを活用する人」とは、「AIを育てて活用し、居場所を与えられる人」とも言い換えられるでしょう。育成が重要なのは人間も同様で、人材の成長が事業成長に直結するため、多くの企業で研修を実施し教育に力を入れています。今後さらにAIの活用は広がるため、企業の経営層や管理職には、「人を育てる」だけでなく、「AIを育てる」というマインドセットが求められるでしょう。GLナビゲーションは教育研修事業で創業し、現在はDXコンサルティングを提供しています。デジタルワーカーの育成にも力を入れ、10名近くのデジタルワーカーと共に働いています。もしデジタルワーカーの採用や育成にご興味がある場合は、ぜひお問い合わせください。