「多様性の推進」を戦略的な観点から捉えているGLナビゲーションでは、創業以来13年、多様な人材の採用を積極的に進めてきました。その理由に迫るとともに、多様な人材が入社後に活躍するためにどのようなサポートを整えているのか、代表の神田に聞きました。(聞き手:GLナビゲーション 広報・黒須)【参考記事】GLには多様な人々を尊重する文化がある、広報を経験してきた黒須さんの2つの挑戦多様な人材の採用は、ビジネス観点でも良い事づくし——神田さんは多様な人材を積極的に採用しています。それは、なぜでしょうか?GLナビゲーションは、14年の歴史の中で創業初期から多様性を受け入れる文化を築くことを意識してきました。それには2つの理由があります。1つ目は、ビジネス上の観点から多様性を重視するという点。2つ目は、人をカテゴリーや表面的な要素で判断することの問題点を個人の実体験から経験したからです。1つ目のビジネス上の理由として、多様な人材を採用するメリットは数多く存在しますが、そのなかでも特に注目すべきは「優秀な人材の獲得」です。ビジネスを成功させるためには3つのマーケットに目を向ける必要があります。サービス市場、資本市場、そして労働市場です。労働市場にはまだ発掘されていない才能が数多く存在します。競合が目を向けていない多様な領域に目を向けることで、優れた人材を採用することができます。我々のようなブランドを築いていないスタートアップ企業として成長を加速させるうえで、優秀な人材の確保は特に重要な視点です。組織が一定規模になると確立された文化や慣習が障壁となってしまうため、多様性を取り入れることが難しくなります。日系の大手企業が直面している問題であり、優秀な人材が労働市場に取り残されている社会の構造的な問題となっています。2つ目の理由は、「人をカテゴリーや表面的な情報によって判断することは良くない」という私の根底にある考え方によるものです。GLナビゲーションが外国人留学生の採用をサポートするビジネスからスタートしており、創業から現在にかけて、多様性を推進するという企業のコアな価値観は、大切に受け継がれています。【参考:数字で見るGL】「多様」と「優秀な人材の獲得」は両立する——ありがとうございます。多様性と優秀な人材の確保を両立できる点は面白いですね。多くの企業が、優秀な人を上から順に採用したら結果論として、似たような属性の人が集まっていることがあると思うんです。GLで優秀な人を採用しようってなると、そうはならないっていうところがすごく面白いと思います。確かにそうですね。『優秀な人材』の定義は、各企業ごとに違うと思います。しかし、結果として同じような人が重宝され、ある特定のカテゴリの人が活躍しやすくなっている側面はあると思います。「海外で活躍していた人が日系企業に転職したら活躍できなかった」というケースも散見されています。また、組織が大きくなるほど多様な人材が活躍できる風土に変えていくことは困難になります。ダイバーシティが、制度だけが先行して形骸化していることも良く聞くお話です。そのため、多様性を重視することは、「当社なら活躍できる」という人材を独占的に採用できるメリットがあります。だからこそ、私達のような採用力が乏しい中小・ベンチャー企業における重要事項として、多様性を重視した組織を構築してきました。多様な人材が活躍できる環境整備が重要——多様性の採用は企業の成長を促しますが、リスクも伴います。地方在住者がリモートワークで会社との繋がりを失ったり、ダブルワークをする人が本業を疎かにする可能性があったり……GLではなぜ上手くいっているのでしょうか?前提として、多様性を尊重した採用を進めるなかで、労働市場の動向に注目しています。例えば、リモートで働く主夫のような特定の属性を持つ人材は、労働市場では伝統的な雇用形態に比べて低く見られがちです。しかし実際のところこういった方々のビジネススキルや経験は豊富です。次に、結果に基づいた評価を重視することで、多種多様な背景を持つ人材がその能力を最大限に発揮できる環境を整えてきました。働き方や状況に関わらず、会社のルール内で結果を出してもらえるかどうかを重視しています。そして、構造的な課題から生じるリスクへの配慮と対応をしっかり整備することです。例えば、子育て中の従業員が急な休暇を取る必要が出てきたり、リモートワークによる孤独感を感じたりするといった問題が考えられます。しかし、これらは適切なサポートや環境整備により、リスクを減らすことができると考えています。多様性の推進は適切な評価とサポートが必要ですが、それによって得られるリターンは計り知れないと感じています。多様性のルーツは”外国人採用の支援”——今、会社は15年目です。創業当時から多様性を大事にしてきたのでしょうか?それはあると思ってます。そもそも私の考えとして、前述したように、カテゴリーとか表面的なことで人を判断してはいけないと思っています。創業時は、外国人留学生の採用コンサルをやっていました。当時、「すぐに辞めてしまう、カルチャーフィットしない」といった理由から、留学生はとても就職が厳しい状況でした。「優秀で日本への想いも持っている留学生は、日本のグローバル化にとってすごく重要な存在なんじゃないか」と思ったところから、外国人採用を支援していくビジネスが始まりました。そういった意味では、元々会社を作った時から多様性を推進する風潮はあったと思いますね。GLはメンバーの9割が「変化の多い日々」を好む——創業して14年間、会社でも色々な波があったかと思います。その際、多様性を大事にしてきて良かったと感じた瞬間はありますか?多様性を大事にすることで得られる最大の利点は、日常の中での気付きや変化の機会が増えることにあります。異なる背景や視点を持つ人材との交流を通じて、「新しい考え方」や「捉え方」を学ぶことができるのです。特に困難な状況の中でも、多様性の存在によってさまざまな解決策やアイディアが生まれることを実感しています。もし多様性を尊重しなかったら、人件費が増加していた可能性があり、採用も困難になっていたと思います。私自身も多様性を受け入れることで、自分らしさを保ちながら経営を推進することができています。さらに多様性を受け入れることは、自分自身の変化ももたらします。私は子供がいないので、子持ちの人々の気持ちは直接理解できません。しかし、子育てをしている社員との交流を通じて、さまざまな悩みや考え方に触れることで、より広い視野や理解を得ることができています。多様性を受け入れることで得られる経験や気付きは、日常の意思決定にもプラスに働いています。——多様な人材を積極的に採用する上で心掛けていることや工夫している点について教えてください。多様性を求める人を採用することです。私たちの組織には同じ考えや価値観を持つ人が少ないのです。多様なバックグラウンドやカルチャーを持つ人々との交流や共同作業を楽しむことができる人たちが、私たちの組織に集まっています。過去にメンバーへのアセスメントを実施した際、驚くべき結果が得られました。スタッフの90%が「変化の多い日々」を好んで選び、また「多様な考え方の人々との関わり」を好む人も同じく90%でした。GLのメンバーの多くが組織が変化や多様性を求め、それを楽しむ文化を持っていることを示しています。私たちは、この「変わっていくことを価値とする」組織文化を大事にし、それをさらに深化・発展させるように努めています。「育児と仕事をトレードオフにさせない」GLのサポート内容——従業員への具体的な支援内容について教えてください。例えば、従業員が仕事と家庭の両方を充実させられるような子育て支援を推進しています。従業員が仕事に没頭したいときは全力でサポートし、家庭のことに集中したいときもサポートするという考えからくるものです。多くの企業では、女性従業員のための育児支援が中心となり、時短勤務などがキャリアアップの障壁となるケースが見受けられます。育児と仕事がトレードオフの関係で、同じ立場で仕事を続けるのが難しいと感じる方も実際多いはずです。しかし、私たちの会社では、育児に専念したい期間もサポートし、仕事を頑張りたい時も応援する制度を設けています。このような制度があることで、産後も安心して働き続けられる環境を整備しています。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー<GLナビゲーションの具体的な支援内容>①妊娠期間のサポート妊娠中のリモートワークや時短勤務の申請制度があります。これは男性従業員にも適用され、パートナーの妊娠をサポートするために利用できます。②出産後のサポート出産後2年間は特別休暇として10日間を追加提供。また、ハウスキーパーやベビーシッターの費用を最大25万円までサポートする制度も導入しています。この制度は男性従業員にも適用されます。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこのような取り組みを通じて、私たちは従業員が自分らしく働き、家庭も大切にできる環境を提供しています。産休・育休の拡大は一見すると女性の支援としての意義が大きいように思えますが、裏を返せば、女性が育児を主体的に担わされる風土が強化されているとも受け取れます。男性も同様に産休・育休を取得すると、経済的な問題が生じることが多くなり、結果として女性だけが家事・育児を背負い込む風土が生まれています。これは、変えていかなければならないと強く思っています。私たちの会社では、従業員の22.6%が首都圏外に在住しています。また、リモート、アルバイト、時短勤務、副業など、多様な働き方のニーズに応えています。また、フリーランスの形で関わっている方も多く、それぞれの状況に合わせた環境を提供しています。労働市場のニーズに適切に応えるためのアプローチであり、多様な働き方を望む優秀な人材を獲得する上で極めて重要だと認識しています。——最後に、今後、さらに取り組んでいきたいことがあれば教えてください。GLナビゲーションは、多様性の推進を戦略的な観点から捉えています。これから強化することとして、障がい者雇用や異なるバックグラウンド・状況を持つ人々の受け入れを重視しており、多様性が組織にとってのスケールアップのカギであることを引き続き示していきたいです。多様性の促進は、多くの企業が取り組む点であるものの、実際の適用や成功事例はまだ少ないのが実態です。我々は多くの中高年の従業員を採用しておりコンサルタントの25%近くが60歳以上です。外国籍のメンバーも積極的に採用しており、新卒採用の約半数が、従業員全体で12%以上が外国籍となっています。多様なバックグラウンドを持つ人々が集まる場として組織も従業員も成長しています。このような多様性を持つ組織が、ビジネスの成功を収めることは、今後の日本の社会にとって極めて意義深いことであり、必ず実現したいと思っています。多様性が生産性やビジネスの成功に直結することは、多くの研究によっても証明されています。GLナビゲーションは、多様性を活かした成功事例を社会に示す役割を果たしたいと考えています。——ありがとうございました!