2020年9月に経済産業省から発表された「人材版伊藤レポート」が公表されて以降、人材に関する注目度が高まっています。従来、経営戦略と人材戦略はあまりリンクされてきませんでしたが、中長期的な企業価値の向上に向けて両者をリンクさせ、特に、経営資源である「人的資本」に投資を行う重要性が注目されています。そのような状況のなか、GLナビゲーションが取り組んできた「セールスDXの推進」は、人的資本経営においても効果があることに気が付きました。本記事では、セールスDXを基盤にした営業マネジメントが人的資本経営に効果的な理由をお届けします。目次人的資本経営のおさらい経済産業省によれば、人的資本経営とは、「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営」とされています。企業や組織で働く人材を経営資本のひとつとして捉え、人材の価値を最大限に引き出し、中長期的に企業価値を高めていくことを指しています。経営環境の激的な変化に対応し、企業を存続するためには、人材を「コスト」ではなく「投資対象」として捉え、社員の価値を引き出す経営スタイルへの転換が求められています。投資家などステークホルダーは企業の将来性を判断する指標として、情報開示を強く求めるようになっていることから、経営者は無視できない概念と言えるでしょう。「フィードバック」でわかる、営業組織のレベルセールス組織においてもフィードバックの種類から、「人への投資」に注力しているかどうかが分かります。フィードバックを3つに分類すると以下のように整理できます。タスク遂行メンタルトレーニング・教育次に、レベルが低い営業組織のマネジメントを整理すると、次のようなケースが該当します。「売上ノルマ」などの結果のみのマネジメント「架電100件」などのタスクのみのマネジメント「気合と根性」のようなメンタル面だけのマネジメントこのように、スキルを伸ばす「教育・トレーニング」がおざなりになってしまっている営業組織のマネジメントは人材が成長しない、レベルが低いマネジメントと言い換えることができます。まず、伸ばすべき3つのスキルとは?では、スキルを伸ばす「教育・トレーニング」に注力する上で、どのようなスキルを伸ばすのが良いのでしょうか?1.業界の知識を得る営業で成果を挙げる上ではマーケティング戦略の思考が欠かせません。事業戦略を立案する上で、正しい「現状分析」ができなければ「適切な課題設定」や「有効な打ち手」を導き出すことはできません。例えば、戦略フレームで有名な「3C分析」があります。3つのCとは、Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)を指しますが、分析の順番にも意味があります。Customer(市場・顧客)Competitor(競合)Company(自社)まずは市場や顧客を理解した上でマクロのトレンドを理解します。その環境下で競合がどのように対応しているのか、それを踏まえて自社はどのような行動を取るべきかを導き出します。よく見られるのが「自社」の情報量が多い、偏った分析です。これでは適切な意思決定はできません。メンバー育成においても、市場や顧客、業界を意識し、自社のポジションを意識しながら、日々の業務と結びつけ、実行することが成果に繋がります。2.仮説思考を鍛える仮説思考とは「課題に対する答えの仮説を設定する」ことで、問題解決のための「ツール」として活用されています。簡単に述べると、物事を「答え」から逆算して考えるアプローチです。ビジネスの現場においては、「正解」が用意されていることはほぼありません。限られた目の前の情報から最も可能性が高い解決策を「仮の結論」として設定し、その仮説に基づいてPDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:測定・評価、Action:対策・改善)サイクルを回していく行動が求められます。仮説思考を鍛えることで、効率よく問題解決を進めていくことができます。仕事のスピードアップ、生産性が向上する、俯瞰して物事を判断できる、リーダーシップが向上する……このような様々な効果が期待されるのが仮説思考です。3.ロジカルシンキングロジカルシンキングとは物事を体系的に整理し、結論と根拠に分け、論理的なつながりを捉えながら筋道を立て、矛盾なく考える思考法です。物事を論理的に捉えることで、問題解決時の原因特定や解決策を考案する際にも効果的な思考プロセスです。社内外における打ち合わせ、会議でも自分の意見を聞き手にもわかりやすく、正しく伝えることができます。前項2でご紹介した仮説思考における結論に至るまでの思考の論理性や情報収集・データを分析した結果に基づいて、客観的な視点で見定めることにも繋がります。セールスDXを推進するメリットセールスDXを推進するメリットとして、最初にSalesforceなどのSFAツール(営業支援ツール)やMarketoなどのMAツール(マーケティング支援ツール)の使い方を学ぶことができる点にあります。ツールを使いこなすことができると数字の見方を学ぶこともでき、数字を判断するためには業界知識や仮説思考、ロジカルシンキングといった思考が自然と求められるため、使いこなせるようになるだけで好きを伸ばすことに繋がります。またこれらのITツールを使える人材は市場価値も高く、「自社だけでしか活かせないスキルだと意味がない」「自分のキャリアが不安である」といった、若手人材が抱く悩みも解消される効果が期待できます。以下では具体的なメリットについて解説します。モニタリング指標ができ、トレーニング効率が高まるセールスDXが推進されることで日々の営業活動がデータとして可視化され、経営者や事業責任者は数字に基づく客観的なフィードバックをすることができます。マネジメント層の目線から見ると、組織やメンバーに関するデータを踏まえて、実行すべきタスクが完了できていない、数字の捉え方が甘い、課題解決のためのスキルを伸ばす必要があるといった、状況にあわせた的確なアドバイスに繋がります。メンバー目線から見ると、モニタリング指標を元に、指標を改善するアクションを取ることで成長実感に繋がります。上司による「できる/できない」の主観的な判断ではなく、営業活動をプロセスに分解し、各数値を可視化し、可視化された数字の分析・読み解く力を鍛えることでトレーニングを効率的に進めることが可能となります。GLナビゲーションでは、商談状況をSalesforceのレポート、ダッシュボードで可視化することで「今月どの案件がクローズできそうか」「合計の着地はどのくらいになりそうか」といったForcast(売上予測)をSalesforceで管理しています。スコアリング機能により営業の勘と経験ではなく、データとして顧客ニーズや確度を正確に把握できるようになりました。より解像度の高い状態で顧客を理解できるため、インサイドセールスのトークや提案を顧客起点で設計でき、顧客との関係強化がしやすくなりました。営業のノウハウ(勘と経験)をデータとして管理、検証することでPDCAを回すことができ、ノウハウを武勇伝で終わらせずに更に高い次元に進化させる土台ができたことも大きなメリットです。GLナビゲーションのインサイドセールスチームの育成例GLナビゲーションのインサイドセールスチームの教育例をご紹介します。一般的にはテレアポ部隊というイメージが強いかもしれませんが、弊社でのテレアポは初期段階のトレーニングフェーズです。そこからは、顧客のニーズに合わせた提案力を鍛えたり、マーケティングチームと連携してSalesforceやMarketoを活用したデータ抽出、レポートの作成を行い、どこに課題があって、どのような改善策、どのチームを巻き込む必要があるのかを考えていくフェーズにキャリアレベルを上げていく設計にしています。順番で言うと、新規のアウトバウンドセールスから始まり、ビジネスパートナーからのコンサルタント集客を行うプロジェクト提案、コンサルタント提案を行い、最後はデータを扱う戦術設計まで、ポジションを上げていく育成プロセスを敷いています。キャリアレベルを上げることによって、ネクストキャリアの選択肢も広がります。 アカウントセールスとして、Tier1の顧客のニーズ発掘や深掘りを行ったクロージングを行うポジションに行くこともできます。データとツールを活用しながら営業戦略や戦術に落とし込んだり、汎用性の高い施策を行って、営業活動をより生産性の高いものにしていくマーケティングのチームに行くこともできます。 マーケティング・営業に限らず、プロセス全体を把握した上で、どこにボトルネックがあるのか、どんな要因でボトルネックが起きているのか、ボトルネックを解消するためにどんな意思決定が必要なのかを明確にします。課題に合わせて、体制変更やシステムへのオペレーション実装、人員採用などの施策を推進する営業推進のチームに移動することも可能です。インサイドセールスは単純な実行部隊というよりは、マーケティングと営業の両方の要素を兼ね備えたレバレッジ人材です。レベルアップを重ねることで、セールス領域を極めていくことも、汎用性が高いジェネラリストになっていくことも、インサイドセールス自身が選べるようにしています。このように、セールスDXを推進することでメンバーは自ずと「ツール活用」や「数字に基づいた仮説思考」、「課題把握・解決策を掲示するスキル」を磨くことができ、営業成績の向上や給与アップ、市場価値の向上といった効果を見込むことができます。セールスDXを推進すること人的資本経営のつながりとは?本記事でご紹介したセールスDX組織で身につくスキルは、自社だけでなく、社会でも通用する一般的なスキルです。人的資本を形成して成果に結びつけることで、会社と従業員がWin-Winの関係になります。「人を資産として育てる」、まさに人的資本経営ではないでしょうか。